第7回機能水シンポジウム 2000東京大会

アルカリイオン水の有する胃粘膜防御機構ーそのメカニズム解明

○内藤裕二、高木智久、戸祭直也、石川 剛、
半田 修、松山希一、吉田憲正、吉川敏一
京都府立医科大学第一内科



Gastrprotection by Alkaline Ionized Water

○Yuji Naito,Tomohisa Takagi, Naoya Tomaturi, Tuyoshi Ishikawa,
Osamu Handa, Kishi Matsuyama, Norimasa Yoshida, and Toshikazu Yoshikawa
First Department of Medicine, Kyoto Prefectural Universitiy of Medicine


SUMMARY
The objectives of this study were to determine the effects of alkaline ionized water (AIW) on acute gastric mucosal injury induced by aspirin in rats. Oral administration of acidified aspirin (200 mg/kg) resulted in linear heoorrhagic erosions and the increase in myeloperoxidase (MPO) activity, an index of neutrophil infiltration, in the gastric mucosa. Theseincreases in total erosions and MPO activity were inhibited by the 2-week administration of AIW (pH 10.5, ORP-450mV). Aspirin administration resulted in an early increases in were also inhibited by the AIW administration. These results indicate that chroninc administration of AIW is dffective against aspirin-induced gastric mucosal injury, and that its cytoprotective action is associated with inhibiting neutrophil accumulation to the gastric mucosa or with decreasing the inflammatory cytokine production.


〔 目的 〕 消化管疾患に対するアルカリイオン水の臨床応用としては
        1) 上腹部不定愁訴  Non-ulcer dyspepsia(NUD)
        2) 過敏性腸症候群 Irritable bowl syndrome(IBS)
        3) 全身疾患(糖尿病、甲状腺機能低下症)に伴う便秘症
        4) 消化性潰瘍 Peptic ulcer disease
        5) 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)常用者
などが期待されるが、1)、2)については臨床治療が実施されている。演者らは、従来より胃粘膜障害機構の詳細について検討を続けてきており、胃粘膜障害における炎症反応の意義、活性酸素、脂質過酸化反応の間よなどを報告してきた。本シンポジウムにおいても、ラットや培養胃粘膜細胞を用いた実験的胃粘膜障害モデルを用いてアルカリイオン水の有効性を検討してきた。その結果、1)アルカリイオン水には直接的な活性酸素消去作用はないこと、2)ラットを用いた短期投与試験では胃粘膜保護作用を認めないこと、3)アルカリイオン水を2週間飲用したラットでは実験的胃粘膜障害が有意に抑制されることを見いだしてきた。胃粘膜障害モデルとしては、虚血再灌流性胃粘膜障害、アスピリン胃粘膜障害、ストレス惹起性胃粘膜障害などを用いて検討を行った。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)はその幅広い薬理作用から、現在臨床医学のばにおいて最も広く使用されている薬剤のひとつであるが、その副作用としての胃粘膜障害が問題となっている。本障害の主たるメカニズムがcyclooxygenase 1(COX1)阻害作用に基づくものと考えられており、最近ではCOX1阻害作用の弱いCOX2阻害剤も臨床応用が開始されている。実際にCOX2阻害剤による胃粘膜障害の頻度は少なくなると報告されている。ただし、アスピリンは抗炎症作用だけでなく、血小板凝集抑制作用、微小循環改善作用、大腸腫瘍の成長抑制などが見出されており、今後とも広く臨床で使用されるものと考えられる。それゆえ、アスピリンによる胃粘膜障害の予防は極めて重要である。本シンポジウムの目的は、アスピリンによる胃粘膜障害に対するアルカリイオン水の効果をカットを用いて検討することにある。

【方 法】 Sprague-Dawley雄性ラット(体重160-180g)を用いた。2週間の飼育期間中、アルカリイオン水群にはNational社製アルカリイオン整水器TK780で作成したアルカリイオン水(pH 10.5, ORP -450mv)を自由飲水させた。対象群では水道水を自由飲水させた。急性胃粘膜障害は、18時間絶食ラット胃内にアスピリン(200mg/kg)と塩酸(0.15N)を投与することにより作製した。経時的にアスピリン投与後に腺胃に生じた出血びらんを実態顕微鏡下に観察し、リン酸緩衝液を用いてホモジェネートを作製し、炎症性サイトカイン(TNF-α)ならびに好中球浸潤の指標としてmyeloperoxidase(MPO)活性を既報に従い、測定し、それぞれの値は蛋白濃度で補正した。また、胃粘膜組織におけるTNF-αmRNA発現についてもRT-PCR法を用いて検討した。

【結 果】 1)2週間の飼育後に2群間に体重、血液生化学検査、抗酸化酵素に有意な差は認められなかったが、アルカリイオン水摂取群で抹消血白血球数は軽度上昇していた。2)アスピリン投与3時間後にはラット腺胃に出血びらん性の粘膜障害が出現し、アルカリイオン水投与群ではびらんが有意に抑制されていた。3)MPO活性はアスピリン投与後有意に上昇し、アルカリイオン水投与群において抑制されていた。4)炎症性サイトカインTNF-αの胃粘膜中濃度は、アスピリン投与後有意に上昇し、アルカリイオン水投与により抑制されていた。5)TNF-αRNAの発現は正常ラット胃粘膜ではほとんど発現が観察されないが、アスピリン投与後初期より発現の亢進が認められた。また、この発現の亢進はAIW投与により有意に抑制されていた。

【結 論】 代表的なNSAIDであるアスピリンによる胃粘膜障害に対するアルカリイオン水の有効性が確定された。その作用機序として、活性化好中球抑制作用や炎症性サイトカインTNF-αの産生抑制作用が関与する可能性が示唆され、その抑制はmRNAレベルですでに抑制されていた。 * サイトマップ

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